
日々の積み重ねが未来の健康を左右します
ー 生活習慣病
生活習慣病のこわさは、痛くもかゆくもないまま進み、ある日とつぜん心臓や脳の発作という形で表に出ることにあります。食事・運動・飲酒・喫煙といった毎日の習慣が積み重なって起こる病気で、自覚のないうちに血管や臓器を傷め、気づいたときには重症化するケースも数多く見られます。特にがん・脳卒中・心臓病は三大生活習慣病と呼ばれ、日本人の死因の多くを占めている状況です。症状が出てからでは遅い病気だけに、何も感じない段階で自分の数値を知り、習慣を整えておくことが、将来の体を守る最大の手立てになります。当クリニックでは患者様のライフスタイルを丁寧に分析したうえで、エビデンスにもとづくサポートを行っていきます。
生活習慣病を引き起こす要因と分類
生活習慣病を招く要因には自分では選べない遺伝や体質もありますが、自ら変更できる食事や運動の見直しで発症を防げます。糖尿病や高血圧、脂質異常症のリスクを下げるためにアプローチすべきなのは、日々の習慣という選択可能な要素です。病原体などは個人の意思で制御できません。そのため、体調に異変が現れる前の段階から変更できる習慣へ手を付ける行動が、将来の健康を守る防衛策となります。
1.毎日の「食生活」に潜むリスク
数年先の健康状態は、日々の食事内容や食べ方によって決定されます。摂取する食べ物は内臓脂肪の蓄積具合や血管のしなやかさにダイレクトに関わる要素です。
塩分の過剰摂取

血管に圧力をかけ続けて高血圧を招く大きな要因となり、動脈硬化を加速させます。
食べ過ぎ(過食)

日頃の過食は体重増加を招き、インスリンの効き目を低下させ糖尿病の発症に繋がります。
栄養バランスの偏り

お野菜の不足などで必要な成分が足りないと、脂肪や糖分の分解に支障をきたします。
不規則な食事時間

夜遅い飲食や一度の過食は、脂肪を溜め込みやすく体重増加やお腹の負担に繋がります。
2. 「嗜好品や活動量」の影響
全身の健康状態が数年先にどう変化するかは、日々の運動量や嗜好品との距離感で決まります。体を動かす頻度やアルコール、たばことの付き合い方が、将来の体格や体力を構成する要素です。
過度な喫煙

心筋梗塞のリスクを高める大きな引き金が、たばこに含まれるニコチンによる血管の収縮です。収縮した状態が持続すると動脈硬化が進行し、深刻な心血管疾患を招く恐れがあります。
過度な飲酒

脂質異常や血圧上昇を誘発する根底には、アルコールの過剰摂取があります。お酒は中性脂肪を増加させるとともに、解毒を担う肝臓へ直接的なダメージを与える要素です。
慢性的な運動不足

慢性の病気につながるお腹の脂肪は、体を動かさない生活によって蓄積されていきます。運動が不足すると全身の筋肉量や消費エネルギーが低下し、余ったエネルギーが脂肪として蓄えられます。
水分摂取の不足

心臓や腎臓に過度な負担がかかる原因の一つに、体内水分の減少が挙げられます。水分が足りないと血液の粘度が高まり、循環させる心臓や老廃物をろ過する腎臓の働きを酷使する恐れがあります。
3. 「社会生活や心の状態」による負荷
生活習慣病のリスクを高める要因として、目に見えない心身への負荷が見落とせません。現代の日常生活において完全に避けることが難しい精神的な緊張や身体的な疲弊は、深刻な病気を誘発するきっかけとなります。
精神的なストレス

過度なプレッシャーは緊張状態を促す神経を過剰に働かせ、体内バランスの乱れを招きます。これにより血管や糖のコントロール機能に歪みが生じ、血圧の急上昇や血糖値の不安定な乱高下を引き起こす大きな要因となります。
睡眠不足や質の低下

夜間の休養が不十分であったり眠りが浅かったりすると、満腹感や空腹感を司る体内物質の調整機能が狂ってしまいます。その結果、必要以上の食べ過ぎを引き起こすだけでなく、病気から体を守る防衛機構の弱体化にも直結します。
過重労働

健康へ配慮して食生活を整える気力や時間は、過度な働き方によって損なわれます。過重な業務によって肉体や精神に慢性的な疲労が蓄積すると、日々の食事にまで気を配る生活上のゆとり自体が失われてしまいます。
不適切な生活環境

体調を一定の状態に維持する仕組みにトラブルが生じる背景には、日々の生活空間を取り巻く外部の要素が関係しています。周囲の騒音や激しい寒暖差といった環境から受ける刺激は、心身に大きな負荷を与えて予期せぬ不調を招くことがあります。
生活習慣病を予防するために
- 症状がなくても、健康診断やがん検診を受ける習慣をもつ
- 高血糖や脂質異常を指摘されたら、様子を見ずに治療を始める
- 野菜を先に食べる、腹八分に抑えるなど、食べ方を少し変える
- 夜ふかしを減らして睡眠を確保し、自分なりの息抜きをもつ
- お酒は量を決めて飲み、飲まない日を週に何日かつくる
- たばこを吸う人は、本数を減らすより「やめる」を目標にする
- 自分は吸わなくても、家庭や職場でたばこの煙を避ける
- エレベーターを階段にするなど、日常の中で体を動かす回数を増やす

生活習慣病がたどり着く「全身の合併症」
早期の治療介入や日々の習慣の見直しを進めれば、高血圧や糖尿病の悪化は十分に抑制できます。発作を起こして救急搬送されるような最悪の結末を迎える前に、手前で進行を食い止めるアプローチが可能です。万が一、一命を取り留めたとしても、麻痺などの重い後遺症が日常生活へ深刻な影を落とすケースが存在します。手遅れになる事態を防ぐため、体調に少しでも気になる点があれば、早い段階で一度医療機関にご相談ください。
糖尿病

全身の血管にダメージを与えていく病態の正体は、血液中のブドウ糖である血糖の過剰な蓄積です。病名の影響で尿に糖が出る状態ばかりに着目しがちですが、本当のトラブルは尿ではなく血管の内部で進行します。血糖値が一定の基準を超えると尿中に溢れ出てくるものの、尿から糖が検出されなくても血中の数値が高ければ診断されるケースがあります。尿糖陰性だからと安心はできず、国内でも多くの患者さんが治療を続けている身近な疾患です。
糖尿病の種類とそれぞれの原因
複数のタイプに分類される糖尿病は、それぞれの発症にいたる成り立ちが大きく異なります。具体的には、1型や2型、妊娠糖尿病のほか、特定の要因によって引き起こされるものなどです。それぞれの特徴に応じ、個別に対処していく必要があります。
1型糖尿病
1型は生活習慣の要因とは関係がなく、自身の免疫機能の乱れによって膵臓のβ細胞が破壊される現象が発端となるケースがあります。その結果、血糖値を下げるインスリンがほぼ分泌されなくなるため、周囲からの誤解を解消し正しい認識を持たねばなりません。
| 原因 | 膵臓でインスリンを作る細胞が、自己免疫の異常などによって壊されてしまうことで発症します。 |
|---|---|
| 特徴 | 生活習慣とは関係なく、お子様や若い世代に急に発症することが多いタイプです。 |
2型糖尿病
血液中のブドウ糖(血糖)が正常よりも増え続け、全身の血管に負担をかける病気です。通常、食事から摂った糖分は、膵臓から出る「インスリン」というホルモンの働きによって細胞に取り込まれ、エネルギーに変わります。しかし、このインスリンの量が足りなくなったり、効き目が悪くなったりすることで、糖が血液中に渋滞してしまう状態を指します。
| 原因 | 遺伝的な体質(家族に糖尿病の人がいるなど)をベースに、過食や高脂肪食といった食生活の乱れ、運動不足、肥満、過度なストレスなどの環境要因が重なることで発症します。これらの生活習慣の積み重ねが、インスリンを分泌する細胞を疲弊させ、働きを低下させる主な引き金となります。 |
|---|---|
| 特徴 | 初期には痛くも痒くもないため自覚症状がほとんどなく、健康診断などの血液検査で初めて指摘されるケースが大半です。放置すると全身の細い血管や太い血管が少しずつ傷つき、将来的に失明や人工透析、心筋梗塞といった重篤な合併症を招く恐れがあります。 |
妊娠糖尿病
妊娠中に初めて発見、または発症した、まだ糖尿病には至っていない「軽い糖代謝の異常」です。もともと糖尿病を患っていた人が妊娠した場合(糖尿病合併妊娠)とは明確に区別され、出産後には血糖値が一時的に正常に戻ることが多い病態を指します。
| 原因 | 胎盤から出るホルモンにはインスリンの働きをブロックする作用があるため、妊娠中は通常よりも多くのインスリンが必要になります。しかし、その需要に母体の膵臓の対応が追いつかなくなることで、血糖値が上昇してしまいます。 |
|---|---|
| 特徴 | 管理の基本は食事療法ですが、必要に応じて赤ちゃんに影響のないインスリン注射を行うことがあります。また、妊娠糖尿病を経験した人は、将来的に通常の「2型糖尿病」を発症するリスクが高まる傾向にあるため、出産後も定期的な検査を続けることが大切です。 |
その他の特定の機序によるもの
糖尿病のなかには、生活習慣と関係なく発症するものもあります。ほかの病気や、治療に使う薬の影響で血糖が上がるタイプです。
糖尿病の代表的な症状
のどの異常な渇き

いくら水を飲んでも渇きがおさまらないときは、血糖の上昇が隠れている場合があります。血液中にあふれた糖を尿と一緒に出そうとして尿の量が増え、体の水分がどんどん失われていくためです。
多尿・頻尿

尿とともに糖が排出される際、水分も一緒に引きずり出されるため、尿の回数や量が増加します。
全身の倦怠感

食べているのに、疲れが抜けない状態が続きます。これはエネルギー源である糖を細胞が取り込めなくなり、栄養が足りないのと同じ状態に陥るためです。
急激な体重減少

食事の量を減らしていないのに体重が落ちていくのは、注意すべきサインです。糖をエネルギーに使えなくなった体が、代わりに自分の筋肉や脂肪を分解し始めています。
糖尿病の治療
食事療法
食事は治療の土台となる大切な習慣です。食事療法は単に制限をかけるだけではなく、膵臓への負担を減らし、インスリンの働きを助けるための「適切な栄養摂取」を目的としています。
- 適正な摂取エネルギー量の算出:年齢、性別、身体活動量や肥満度に基づき、お身体にふさわしいエネルギー量を医師と相談して決定します。
- 栄養バランスと食べる順番の工夫:糖質、脂質、たんぱく質をバランスよく摂るだけでなく、食物繊維が豊富な野菜から先に食べることで糖の吸収を緩やかにします。
- 血糖値を安定させる食習慣:1日3回、決まった時間に規則正しく食べることで、食後の血糖値の急激な上昇(血糖スパイク)や、膵臓の過度な疲弊を防ぎます。
- 無理のない継続への配慮:これまでの食生活を丁寧にヒアリングし、医学的根拠に基づきながらも、患者様が日常生活で無理なく続けられる具体的な提案を行います。
運動療法
運動によって筋肉での糖消費を促すとともに、インスリンが効きやすい「太りにくい体質」を作ることが目的です。
- 有酸素運動による糖の直接消費:ウォーキングや水泳などの有酸素運動を継続することで、血液中の糖分がエネルギーとして効率的に消費されます。
- 筋トレによる代謝向上:筋肉量を維持・増加させることで基礎代謝が上がり、運動をしていない時間帯でも糖を消費しやすい身体になります。
- 効果的なタイミングの選定:一般的に食後30分から1時間後に運動を行うと、食事によって上昇する血糖値を効率よく抑えることが可能です。
- 低血糖への安全性確保:お薬を服用中の方は運動による低血糖のリスクもあるため、全身状態を確認しながら安全な運動強度や時間をアドバイスいたします。
薬物療法
食事と運動だけでは血糖を十分に抑えきれないとき、お薬を組み合わせて治療します。血糖が上がる原因は人によって異なります。インスリンが出にくいのか、出ていても効きにくいのか、原因が違えば必要なお薬も違うため、一人ひとりの状態に合わせて種類を選び、組み合わせていきます。
主なお薬には、次のようなタイプがあります。
- 不足したインスリンを、注射で直接補うもの(自己注射)
- 自分のインスリンが出るよう、膵臓にはたらきかけるもの
- 食後に血糖が上がりすぎないよう、糖の吸収や排出を調整するもの
- 出ているインスリンが体で効きやすくなるよう助けるもの
どのお薬をどう組み合わせるかは、体の状態を見ながら決めていきます。血糖が安定しにくい方や、インスリンを自己注射する方は、ご自身で血糖を測りながら、その値をもとに治療を調整していきます。
糖尿病の合併症
3大合併症
糖尿病性網膜症
眼科の受診が必要となります
糖尿病性腎症
腎臓内科受診が必要
糖尿病性神経障害
頻度が高い合併症
失明や人工透析、心筋梗塞などを防ぐには、高血糖による血管へのダメージを抑える必要があります。高い血糖値が続くと、全身の大小の血管が気づかないうちに傷ついていくためです。細い血管が損傷すると網膜症・腎症・神経障害の3大合併症を招き、生活に支障をきたすことがあります。さらに太い血管が傷めば動脈硬化が進み、脳梗塞などを起こすおそれも否定できません。これらに動脈硬化性の病変を合わせて4大合併症と呼ぶこともあります。医療機関への受診が遅れる事態を防ぐためにも、通院に任せきりにせず、自身の血糖値をコントロールする意識を持ちましょう。
高血圧症

血管の傷みやすさは、同じ血圧の値であっても年齢や肥満、糖尿病などの有無によって変わります。高血圧の基準としては最高血圧140以上、または最低血圧90以上という目安がありますが、この数値だけでリスクを一律には測れません。動脈硬化を早める要素をどれだけ持っているかによって、受けるダメージが異なるためです。そのため、実際に治療を始める基準や目指す目標値については、一人ひとりの状態に合わせて判断します。
高血圧症の種類とそれぞれの原因
高血圧は原因の違いによって、大きく2つのタイプに分かれます。
本態性高血圧
気づかないうちに動脈硬化や心臓の肥大を進め、脳卒中などのリスクを高めるのが本態性高血圧です。日本における高血圧患者の多くがこのタイプで、はっきりとした単一の原因を特定できない特徴があります。体質や日々の生活習慣といった複数の要素が重なって発症し、痛みなどの自覚症状がないため、放置されるケースが珍しくありません。
| 原因 | 遺伝的な体質に加えて、塩分の摂り過ぎ、肥満、過度の飲酒、運動不足、喫煙などの生活習慣が重なることで発症します。 |
|---|---|
| 特徴 | 日本人の高血圧の約9割を占める一般的なタイプです。 |
二次性高血圧
二次性高血圧は、本態性とは反対に、血圧を上げている原因がはっきり特定できるタイプです。睡眠時無呼吸症候群や甲状腺・副腎の病気、薬の副作用などが背後にあり、その元を手術や薬で取り除けば、血圧そのものを治せる可能性があります。若くして高血圧になった方などでは、この二次性が隠れていないか調べることが大切です。
| 原因 | 遺伝的な体質に加えて、塩分の摂り過ぎ、肥満、過度の飲酒、運動不足、喫煙などの生活習慣が重なることで発症します腎臓の病気、ホルモン分泌の異常、睡眠時無呼吸症候群などが原因で血圧が上昇します。 |
|---|---|
| 特徴 | 原因となる病気を治療することで、血圧の改善が見込める場合があります。 |
高血圧症の診断と目標値
高血圧症の診断は、一度の測定だけで判断するのではなく、継続的なデータの確認が重要です。当クリニックでは、診察室での測定に加え、患者様がご自宅でリラックスした状態で測定される「家庭血圧」の数値を重視して、診断と治療計画の策定を行います。
診察室血圧
140/90mmHg以上が高血圧の目安です。
家庭血圧
135/85mmHg以上が高血圧の目安です。
糖尿病を合併している方
血管への負担がより大きいため、通常よりも厳格な血圧管理(目安として130/80mmHg未満)が推奨されます。
高血圧症の治療
食事療法
高齢の方や腎機能が低下している人、また汗をかく夏場などは、極端な減塩がかえって脱水を招く原因になります。食生活の改善は安全に進めることが大前提です。一方で、適正な体重管理や塩分の削減が血圧の低下に深く関わっていることも研究で確かめられています。そのため当クリニックでは、体調や季節に配慮しながら、まずは1日6g未満を目安にした無理のない塩分制限を提案しています。全体のバランスを見つめ直し、心地よく続けられる食事プランを一緒に作っていきましょう。
運動療法
心臓へ急激な負荷をかける激しいスポーツは、かえって血圧の上昇を招くため控える必要があります。運動による降圧効果は数日で落ち着いてしまう性質があるため、次の実施まで2日以上のブランクを作らない定期的な取り組みが理想です。体に強い負担をかけないウォーキングや軽い水泳などの有酸素運動を生活に組み込んでいきましょう。焦らずに回数を重ねていくことで、血管が本来のしなやかさを取り戻し、血圧が安定しやすい体質へと整っていきます。
薬物療法
将来の視力や腎機能を守るためには、血圧をコントロールするアプローチが欠かせません。丁寧な血圧管理を行うことが、糖尿病の合併症である網膜症や腎症の進行を抑えることにつながるからです。特に糖尿病をあわせ持つ人には、インスリンの働きを補い新たな発症を防ぐ効果が期待できる薬剤を優先して処方します。食事や運動の工夫だけでは十分な改善が見込めない場合に薬を併用することは、その先にある心筋梗塞や脳卒中といった重大なトラブルを未然に防ぐための大切な選択肢となります。
脂質異常症

かつて高脂血症と呼ばれていた脂質異常症は、悪玉の過剰だけでなく善玉(HDL)コレステロールの不足も含めて、血液中の脂質バランスが乱れた状態を指します。この病気は、過剰な脂分が血管の内側に蓄積して柔軟性を奪い、将来的に脳梗塞や心筋梗塞を招くおそれがあります。しかし、脂質自体は本来体に欠かせない成分であるため、血中濃度が高くなっても痛みなどの異変を伴いません。この自覚症状のなさが、生活習慣病の中でも治療の必要性を感じにくく、放置されやすい要因となっています。
脂質異常症のタイプと特徴
血液中で測定される脂質成分のうち、どれが基準値を外れているかによって、脂質異常症は主に4つのタイプに分類されます。それぞれの病態に応じて血管へ与える影響や原因が異なる仕組みです。自身のタイプを正しく把握する行動が、適切な対策へとつながります。
高LDLコレステロール血症(悪玉過多)
高LDLコレステロール血症(悪玉過多)は、数値を下げる対策が心疾患のリスクを減らすことに直結する、治療意義の明確なタイプです。この病態では、過剰になった悪玉コレステロールが血管の壁に蓄積し、動脈硬化を直接進行させてしまいます。コントロールによる発症予防の効果は研究データでも確かめられているため、早期の治療介入をおすすめします。
低HDLコレステロール血症(善玉不足)
低HDLコレステロール血症(善玉不足)は、運動不足や喫煙、糖尿病などによって血管内の余分な脂質を回収する成分が足りなくなる状態です。この回収機能の低下は男性に多くみられる傾向があり、放置すると血管内に脂分がたまりやすくなります。
高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)
高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)は、数値が500mg/dLを超えると激しい腹痛を伴う急性膵炎を誘発するおそれがある病態です。この中性脂肪の値は、日々の食事内容やアルコールの摂取習慣による影響をダイレクトに受けて上昇します。
混合型脂質異常症
混合型脂質異常症は、異常が単独であるときよりも動脈硬化の進行リスクが一段と高まる注意すべきタイプです。危険性がはね上がる背景には、悪玉コレステロールの過剰と善玉の不足といった複数の異常が体内で同時に発生している実態が挙げられます。
脂質異常症の原因と仕組み
LDL(悪玉)コレステロールが上がる原因
食事内容
肉類の脂身やバター等の動物性脂肪、揚げ物、トランス脂肪酸を含む菓子類、油の再利用は悪玉を増やす直接の原因です。これらを控えるとともに、コレステロールの排出を助ける食物繊維を積極的に摂ることが大切です。
閉経による影響
女性ホルモン(エストロゲン)には悪玉を抑え善玉(HDL)を助ける働きがありますが、閉経後はこの守る力が失われます。そのため、それまで数値に問題がなかった方でも、更年期以降は急激に上昇しやすいため注意が必要です。
肥満と代謝の低下
体重が増えると基礎代謝が低下し、取り込んだ脂肪をエネルギーとして効率よく燃焼できなくなります。燃え残った脂質が血液中に蓄積しやすくなるため、適正体重を維持して脂質を溜め込まない体作りが求められます。
たばこ・喫煙の害
喫煙は脂質代謝を著しく乱すだけでなく、善玉コレステロールを減少させ、血管そのものを傷つけて動脈硬化を加速させます。糖尿病やメタボリックシンドロームの発症リスクも高めるため、心血管疾患の予防には禁煙が不可欠です。
中性脂肪(TG)が上がる原因
アルコールの過剰摂取
お酒は適量であれば善玉を増やす効果もありますが、飲み過ぎは肝臓での中性脂肪合成を急増させます。高血圧や心不全、痛風の要因にもなるため、週に数日は休肝日を設けるなど、節度ある飲酒を心がけることが重要です。
甘いもの・炭水化物の摂り過ぎ
スイーツ等の糖質や、ご飯・パン・麺類といった炭水化物は、体内でエネルギーとして使われないと中性脂肪に作り替えられます。蓄積した脂肪は血液に溢れ出すだけでなく、肝臓に溜まって「脂肪肝」を引き起こす原因となります。
慢性的な運動不足
食事から摂取したエネルギーが消費されないと、余った分はすべて中性脂肪として体内に蓄えられてしまいます。日常生活でのこまめな歩行や有酸素運動を習慣化し、エネルギーを効率よく消費するサイクルを作ることが大切です。
脂質異常症の治療と管理目標
食事療法
油ものをすべて減らせばよい、と考えている方は少なくありません。しかし脂質異常症の食事で大切なのは、脂を「減らす」ことより「選ぶ」ことです。同じ脂でも、体に害になるものと、むしろ味方になるものがあります。控えたいのは、肉の脂身やバターに多い飽和脂肪酸です。反対に、青魚に含まれるEPAやDHAは中性脂肪を下げてくれるので、積極的に食べたい脂になります。脂の中身をこう見分けたうえで、野菜・海藻・きのこをしっかりとると、余分なコレステロールが体の外へ出やすくなります。塩分は1日6g未満を目安に抑えましょう。血管への負担を、脂と塩の両面から軽くしていくのが狙いです。
運動療法
運動療法で成果を分けるのは、強さではなく続けることです。というのも、運動で得られる脂質へのよい効果は、次に動くまで2日以上あくと薄れてしまうからです。だからこそ、ウォーキング・軽いジョギング・水泳といった無理のない有酸素運動を、1日30分以上、週に合計150分ほど、間をあけずに続けるのが目安になります。こうして体を動かし続けると、薬では増やしにくい善玉(HDL)コレステロールが増え、余った中性脂肪も燃えていきます。筋肉が保たれて基礎代謝も上がるため、太りにくい体づくりにもつながります。
薬物療法
脂質異常症の薬物療法がめざすのは、心筋梗塞や脳梗塞といった、命に関わる発作を防ぐことです。中心となるスタチン系の薬は、悪玉(LDL)コレステロールを下げるだけでなく、血管の壁にたまった脂の塊(プラーク)を安定させ、血管が詰まったり破れたりするのを防ぎます。いわば「血管の保険」です。この薬を始めるのは、食事や運動を続けても目標値まで届かないときや、高血圧・糖尿病が重なって動脈硬化のリスクが高いと判断されたときです。飲みはじめたあとも、血液検査で体の状態を確かめながら、安全に続けていきます。
生活習慣の改善
毎日の生活を見直すことには、薬に負けないほどの力があります。まず見直したいのが、たばこです。たばこの成分は血管を直接傷つけ、善玉を減らし、動脈硬化を一気に加速させます。脂質異常症とたばこの相性は、とりわけ悪いといえます。次に体重です。内臓脂肪がたまる肥満は脂質のバランスを崩すため、BMI25未満をめざして整えると、血圧や血糖の安定にもつながります。お酒も、飲みすぎると中性脂肪を急に増やします。週に数日は休肝日をつくり、血管を休ませてあげましょう。禁煙・減量・節酒という日々の積み重ねが、薬の効果を下から支える土台になります。
生活習慣病から進行する恐れのある全身の重篤な疾患

生活習慣病を放置すると、自覚症状を伴わないまま全身の血管や臓器が少しずつ破壊されていくことになります。たとえば、沈黙の臓器とされる肝臓は脂肪肝から肝硬変へと進むと元の状態に戻すのが困難になります。また、糖尿病の悪化に伴う慢性腎不全では人工透析が必要となり、喫煙や偏った食生活が重なればがんのリスク増加にもつながります。これらの動脈硬化が行き着く先である心筋梗塞や脳卒中などの病態に共通するのは、明らかな異常を感じてからでは有効な処置が難しくなる点です。数値の異常を放置せず、症状が出る前に対策を講じることが大切です。
動脈硬化が原因で起こる「血管の病気」
血液中の過剰な脂質や高い血圧は血管の壁を傷つけ、血管を狭く硬くする「動脈硬化」を引き起こします。これにより全身の血流が滞り、重大な疾患の引き金となります。
心疾患(狭心症・心筋梗塞など)
動脈硬化で心臓の血管が細く、あるいは詰まる疾患です。脂質異常症等によるプラークが主因で、突然の胸の痛みや息切れが現れます。命を守るため、生活習慣の見直しとお薬による適切な数値管理を継続することが極めて重要です。
脳血管疾患(脳卒中・脳梗塞など)
脳の血管が詰まる、あるいは破れることで脳細胞が損傷する疾患です。突然の激しい頭痛や麻痺を招き、重篤な後遺症を残すリスクが高いのが特徴です。予防には血糖値の安定と合わせて、厳格な血圧管理を行う取り組みが必要です。
慢性腎不全(腎機能の著しい低下)
糖尿病や高血圧の合併症により、腎機能が徐々に失われる状態です。老廃物が排出されず足のむくみや倦怠感が生じます。一度失われた機能の回復は難しく、病状が末期に至ると透析療法の導入が必要になるため、早期の管理が大切です。
長年の炎症や生活習慣が招く「臓器の病気」
不適切な食生活、飲酒、喫煙、あるいは細菌やウイルスの慢性的な感染は、特定の臓器に持続的なダメージを与え、取り返しのつかない病変を招きます。
がん(食道・胃・大腸など)
生活習慣や慢性的な炎症により細胞が変異して発生します。特に消化器がんはピロリ菌感染や食生活の影響が大きく、初期は自覚症状が乏しいのが特徴です。定期的な内視鏡検査で早期発見し、適切に処置することが健康を守る鍵です。
肝硬変(肝細胞の線維化)
肝炎や飲酒、肥満により肝臓が硬くなった状態です。機能が低下すると黄疸や腹水、意識障害等の合併症を伴いやすくなります。異常に気づいた時には重症化しているケースも多いため、検診で指摘された際は早めの受診をおすすめします。
睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、起きている時間の安全や社会生活まで脅かすおそれがあるため、早めの対処が求められる疾患です。日中に強い眠気や仕事の効率低下を招く背景には、就寝中に何度も呼吸が止まったり浅くなったりして、体が夜ごと酸素不足にさらされている実態があります。この睡眠時の酸素欠乏が続くと、脳や心臓に大きな負担がかかり、高血圧や心筋梗塞、脳梗塞のリスクが上昇します。さらに糖尿病や認知症の進行につながることもあるため、たかがいびきと軽視できません。眠っている間の問題が重大な事故の原因にもなりかねないため、心当たりがある場合は一度検査を検討しましょう。
睡眠時無呼吸症候群の原因
睡眠時無呼吸症候群の原因を特定するには、まず専用の検査を行って2つのタイプから病態を見極めるアプローチが必要となります。対処法がそれぞれ異なる背景には、発症の仕組みに大きな違いがあるためです。大半を占める種類としては、空気の通り道である上気道が物理的に狭くなるケースが挙げられ、その引き金の多くは肥満による首まわりやあごの脂肪です。これに対し、もう1つの種類として、眠ると脳からの呼吸指令が出なくなって息が止まる呼吸中枢の異常も存在します。ご自身の原因に合わせた適切な治療を行うためにも、まずは検査をおすすめします。

睡眠時無呼吸症候群の症状
睡眠時無呼吸症候群の症状には、日中の強い眠気や集中力の低下、起床時の頭痛などがあり、これらは二次性高血圧の原因を招くこともあります。こうした日中の不調が起きる背景には、睡眠中に激しいいびきや呼吸の停止、夜間の頻尿、寝汗などが繰り返されている実態があります。しかし、最も目立つ兆候が現れるのが就寝中であるため、当の本人はなかなか気づけないという見つけにくさがあります。ご家族からいびきや息の止まりを指摘されて初めて発覚する例も少なくありません。日頃の体調に心当たりがある場合は放置せず、早めにご相談ください。

睡眠時無呼吸症候群の検査
簡易検査(スクリーニング検査)
ご自宅で寝る前に専用の機器を装着していただく検査です。指先や鼻にセンサーをつけ、睡眠中の呼吸の状態や血液中の酸素飽和度を測定します。日常生活を送りながら手軽に行えるため、初めて検査を受ける方に適しています。
精密検査(終夜睡眠ポリグラフィー)
簡易検査の結果、より詳細な調査が必要な場合に行う検査です。呼吸の状態に加えて、脳波や心電図、眼球の動きなどを包括的に測定します。無呼吸の回数や長さ、睡眠の深さを客観的に解析し治療方針を決定いたします。
睡眠時無呼吸症候群の治療
CPAP(シーパップ)療法
鼻に装着したマスクから一定の圧力をかけた空気を送り込み、物理的に気道を広げることで睡眠中の無呼吸を防ぐ、世界的に普及している標準的な治療法です。睡眠の質が劇的に向上するため、多くの方が導入した翌朝から「頭がすっきりする」「日中の強い眠気が軽減された」といった効果を実感されます。重症の方でも継続的な使用により、心筋梗塞や脳血管疾患といった重大な合併症の発症リスクを大幅に下げることが可能です。
当クリニックでは、機器の設定や装着時の違和感に対する相談にも丁寧に応じ、一人ひとりにふさわしい快適な治療継続を誠実にサポートいたします。

マウスピースによる治療
下顎を上顎よりも前方へ引き出した状態で固定する専用のマウスピース(口腔内装置)を装着し、喉の奥の空気の通り道を確保する治療法です。主に軽症から中等症の患者様が対象となります。上記のCPAPと比較して装置が小型で持ち運びに適しているため、旅行や出張の際にも負担なく使用できるのが大きなメリットです。初めて装着される際は違和感を伴うこともありますが、歯科医院と連携して精密に作製することで、就寝中の喉の塞がりを効果的に抑えます。
当クリニックでは検査結果に基づき、この治療法が適応となるかを慎重に判断し、専門的な知見から改善に向けたアドバイスを徹底しております。

生活習慣の改善
睡眠時無呼吸症候群の根本的な改善には、医学的根拠に基づいた生活習慣の見直しが欠かせません。肥満の方は喉周りの脂肪によって気道が狭まりやすいため、適切な食事や運動による減量が極めて有効な対策となります。また、アルコールは筋肉を弛緩させて無呼吸を悪化させる要因となるため、就寝前の飲酒を控えるなどの工夫が必要です。横向きで寝る習慣をつけることで重力による気道の閉塞を軽減できる場合もあり、これら日々の取り組みをCPAP等の治療と併行することで、より高い治療効果が期待できます。
患者様が無理なく続けられる具体的な改善案を共に考え、全身の健康を守る体作りをサポートいたします。

健康診断でご自身の数値を正しく把握しましょう
生活習慣病は自覚症状が乏しいまま進行しますが、検査数値には身体の変化が確実に現れます。定期的な受診で血圧や血糖値を把握し続けることは、心筋梗塞や脳梗塞などの重大なリスクを未然に防ぐために極めて大切です。当クリニックでは、特定健診や入職時健診に幅広く対応しております。日本内科学会認定 総合内科専門医として、検査結果に基づき一人ひとりの生活にふさわしい助言を徹底いたします。 健康な未来を誠実に守るために、まずは一度当クリニックへご相談ください。
